【第7話】現役ラグジュアリーブランドマネージャーが教える|「一旦考えます」と言われてからが本番|切り返しで決定率を上げる接客術

接客術・販売テクニック

「一旦考えます」

この一言を聞いた瞬間、あなたはどうしていますか?

「そうですか、またのお越しをお待ちしております」と笑顔で見送る——それが一番もったいない接客です。

私は現在も外資系ラグジュアリーブランドでプレーイングマネージャーとして働いています。断られる瞬間は何百回と経験してきました。その中でわかったことがあります。

「一旦考えます」と言われてからが、本当の接客の始まりです。

断られてからどう動くかで、決定率は変わる。

その前に:「あれは?」の指差しへの正しい対応

「一旦考えます」と言われる前に、もう一つ対処すべき場面があります。

3点→2点→1点と絞り込み、やっと決まりかけたその瞬間——お客様がふと向かいの棚を指差して言います。

「あれは?」

この場面、あなたはどう動きますか?

❌ 新人がやりがちな対応

素直に指差された商品を手元に持ってくる。

→ その瞬間、2点提示に逆戻り。またゼロから迷い出す。

なぜお客様は「あれは?」と言うのか。商品が気になったからではなく、「本当にこれで良かったのか」という決定前の不安が出ているだけです。

✅ プロの対応

  • その場から動かず、遠目に商品の概要を一言だけ伝える
  • 手元には絶対に持ってこない
  • 多くを語らない。決まりかけている商品への賛辞を添える

✅「あちらはXXですね。ただ今日のご用途(○○シーン)には、今お手元のこちらの方が間違いなく合っていますよ」

⚠️ もちろん購買意欲が高くポテンシャルのあるお客様なら積極的に見せてOK。ここで言っているのは「3点→2点→1点→決定」の流れを守ることを最優先にした場合の話です。

「一旦考えます」と言われた後の5つの切り返し

それでも「一旦考えます」と言われたとき。ここからが本番です。状況に合わせて使い分けられる5つを紹介します。

① 希少性で決断を加速させる

状況:「一旦考えます」と言われた直後。

✅「実は今週でこのカラーの入荷が止まる予定でして、次にいつ入るか未定なんです」

根拠:プロスペクト理論(カーネマン)
人は「得る喜び」より「失う恐怖」を強く感じる。「なくなるかも」が背中を押す。
⚠️ 在庫が本当に少ない・終了予定のときだけ使うこと。

② アンカリングで「お得感」を作る

状況:価格が迷いの原因になっている気配がある。

❌「お値段が気になりますか?」→ 価格の話を自分から蒸し返す

✅「今日はポイント○倍デーなので、実質○○円分お得になりますよ」

根拠:アンカリング効果
最初に提示された数字が判断の基準(アンカー)になる。定価を基準に「お得」を提示すると価格の印象が変わる。「高い」と感じているお客様にも有効。

③ ピーク・エンドの法則で最高の印象を残す

状況:迷いながらも商品への愛着は感じられる。

✅「せっかくなのでもう一度だけ鏡の前で確認してみませんか?」

→ 鏡の前で改めて見た瞬間、「やっぱりいい」と感じてもらう。

根拠:ピーク・エンドの法則(カーネマン)
人は体験の「ピーク(最高点)」と「エンド(最後)」で記憶を評価する。帰る直前に最高の印象を作れば、持ち帰る記憶が「いいもの」に変わる。

④ 返報性でお客様の気持ちを動かす

状況:高額商品の接客で時間をかけてもらっている。

✅「少しお時間いただけましたか?よろしければお飲み物をお持ちします」

根拠:返報性の法則(チャルディーニ)
何かをしてもらうと「お返ししたい」という心理が生まれる。飲み物一杯でお客様の心の温度が変わる。「夫に相談します」という場合も、ここでの温かい対応が「やっぱりここで買おう」に変わるきっかけになる。

⑤ パッションで「ある未来」を一緒に描く

状況:論理ではなく気持ちで動いてほしいとき。

❌「とても素敵ですよ」→ 漠然とした褒め言葉、響かない

✅「このバッグを持って○○に行くところ、想像してみてください。絶対に気分が上がりますよ」

「この商品がある未来とない未来では、楽しさが全然違うと思うんです」

根拠:Mental Simulation Effect(イメージング効果)
具体的な未来をイメージさせることで購買意欲が高まる。「これを買ってほしい」ではなく「この商品がある生活を楽しんでほしい」という気持ちで伝えると、言葉に本物の熱量が宿る。

背中を押すことは、悪いことじゃない

「押しすぎかな」「嫌われたくない」——そう思って引いてしまう販売員は多いです。

でも実際のお客様の心理はどうでしょうか。

背中を押されたい人は、思っているより多い。

「一旦考えます」の裏には「誰かに背中を押してほしい」という気持ちが隠れていることがほとんどです。お客様は情報を持ち帰るより、商品を持ち帰る方が満足度が上がります。

押されることは、そんなに嫌な気持ちになるものではない。押すことも、悪いことではない。ただし「売りたい」という気持ちで押すのではなく、「この人にこれを持っていてほしい」という気持ちで押すこと。そこがマインドの核心です。

もし「考えます」と言われるたびに引いてしまうなら、それはテクニックの問題ではなくマインドの問題かもしれません。「買ってほしい」から「この商品がある生活を楽しんでほしい」へ。この一言の置き換えが、あなたの接客を変えます。

まとめ

  • ✅ 「あれは?」指差しは商品を持ってこない。遠目に一言だけ、決定を守る
  • ✅ 「一旦考えます」はゴールではなく本番の始まり
  • ✅ 5つの切り返しから状況に合った1つを使う
  • ✅ 背中を押す動機は「売りたい」ではなく「持っていてほしい」

📋 明日からできること

✅ 「あれは?」と指差されたらその場から動かず、一言だけ伝えて手元の商品に賛辞を添える

✅ 「一旦考えます」と言われたら、まず⑤「この商品がある未来」を一緒に描いてみる

✅ 「買ってほしい」を「この商品を持って楽しんでほしい」に言い換えて接客に臨む

📖 次回予告

【第8話】1人のお客様に「2〜3点」売るセット提案術

「追加提案は厚かましい」——その思い込みを捨てるところから客単価は変わります。1点決定後こそが最大のチャンス。ラグジュアリーブランドが売っているのは「体験」だからこそ、提案しないことが失礼になる理由をお伝えします。

📚 この話を読んだあなたにおすすめの1冊

断られた時こそ、影響力の使い方が問われます。心理的原則を武器に、切り返しの精度を上げましょう。

影響力の武器 第三版

影響力の武器 第三版

楽天市場で見る
影響力の武器 第三版

影響力の武器 第三版

Amazonで見る

コメント

タイトルとURLをコピーしました