📖 売れる接客の教科書シリーズ
第1章(基礎〜販売):第1〜10話はこちら
▶ 第2章:個人売上 実践強化編
外国人のお客様が来店した瞬間、頭が真っ白になる——そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
「英語が話せないから無理」「何を言っているかわからない」「先輩に任せたい」。そう感じて一歩引いてしまう販売員は多いと思います。でも、現場で外国人客が増え続けているいま、それではいつまでたっても変われません。
結論から言います。外国人接客に英語力は必要ありません。必要なのは「道具の使い方」と「たった一言の工夫」です。
この話では、言語の壁を実際に超えてきた現場目線で、すぐに使える外国人接客の具体的な方法をお伝えします。
私は現在も外資系ラグジュアリーブランドでプレーイングマネージャーとして現場に立ち続けています。インバウンド需要が増えたここ数年、外国人客の対応は避けられないものになりました。英語が堪能なスタッフだけが対応するのではなく、チーム全員が「道具と工夫」で壁を超える——それが現場のリアルです。
外国人接客に必要なのは英語力ではなく
「道具と一言」
翻訳アプリ・価格差の見える化・その国の言葉一言と笑顔。それだけで壁は超えられます。
まず日本語で話しかける——外国人かどうかの判断
外国人かどうかを見た目で判断して、最初から英語で話しかけるのは実はリスクがあります。
外見が外国人に見えても日本語ネイティブの方は大勢います。英語で話しかけて「あ、日本語で大丈夫ですよ」となった時の気まずさは、お客様にとっても販売員にとっても気持ちいいものではありません。
基本は「まず日本語でアプローチする」こと。これが正解です。
アプローチの正しい順番
STEP 1:まず日本語で話しかける
「いらっしゃいませ」「よろしければご覧ください」——いつも通りに始める。
STEP 2:外国人と分かったら出身国を聞く
「Where are you from?」——シンプルにこの一言でOK。
STEP 3:その国の言葉を一言添える
これだけで一気に空気が変わります。
「その国の一言」がアイスブレイクになる
出身国が分かったら、その国の言葉を一言だけ使ってみてください。流暢に話す必要はありません。「こんにちは」に相当する挨拶が言えるだけで十分です。
外国人のお客様が日本の販売員から自分の国の言葉で挨拶された時の反応——目が輝いて、自然と笑顔になります。この一言が、その後の接客全体を柔らかくする鍵です。
✅ 国別・アイスブレイクの一言
| 出身国・地域 | 一言 | 読み方のヒント |
|---|---|---|
| 韓国 | アンニョンハセヨ | そのままカタカナで |
| 中国・台湾 | ニーハオ | そのままカタカナで |
| フランス | ボンジュール | Bonjour |
| イタリア | ボンジョルノ | Buongiorno |
| アラビア語圏 | マルハバ | Marhaba |
| 英語圏(全般) | Hi! / Welcome! | 笑顔で明るく |
「こんにちは」と同じ意味でなくても、その国の知っている言葉なら何でもOKです。発音が完璧でなくても全く問題ありません。
大切なのは「あなたの国のことを少し知っています」という姿勢です。それだけで相手の警戒心がほぐれ、コミュニケーションが取りやすくなります。
言語対応の優先順位——使えるものをすべて使う
「英語が話せないと外国人客の対応はできない」と思っていませんか?そんなことはありません。今は翻訳の道具が充実しています。英語力ゼロでも、道具を使えば会話は成立します。
言語対応の優先順位
① 翻訳アプリを即座に使う(最優先)
Google翻訳・DeepL・Papago(韓国語に強い)——スマホをすぐ取り出せる状態にしておく。無理して間違った外国語を使うより、正確なアプリを見せた方がずっと伝わります。お客様にスマホを向けて「こちらをどうぞ」と差し出す。それだけで会話が始まります。
② 店内に話せるスタッフがいれば入ってもらう
英語や中国語が話せる同僚がいれば、商品が絞れた段階でさりげなく声をかける。ただし最初から「任せた」は厳禁。自分で対応を始めてから、必要に応じてサポートを求めるのが基本。
③ 百貨店・商業施設の通訳スタッフを活用する
百貨店や大型商業施設には通訳対応スタッフがいる場合があります。事前に「どこに連絡すれば来てもらえるか」を確認しておくと、いざという時にスムーズに動けます。
「完璧に会話できなければダメ」ではありません。お客様も外国でのショッピングを想定しています。伝えようとする姿勢があれば、それは必ず伝わります。
外国人が日本で買う3つの理由
外国人接客で大切なのは、「なぜ彼らが日本でこの商品を買うのか」を知っておくことです。理由がわかれば、何を強調すべきかが見えてきます。
🌏 外国人が日本で買う3つの理由
① 価格——日本で買う方が安い
円安の影響で、同じ商品でも日本で購入した方が大幅に安くなるケースが多い。特にラグジュアリーブランド品は現地との価格差が数万円になることもあります。「現地より安く買える」という情報は、購買を後押しする最大の動機になります。
② 思い出——日本で買ったという特別感
「日本旅行の記念に買った」という体験そのものに価値があります。帰国してからも「これ日本で買ったんです」と話のネタになります。旅の思い出と一緒に刻まれる買い物体験を作ることが、外国人客へのサービスの本質でもあります。
③ 安心感——日本ブランド・日本製への信頼
「日本製は品質が高い」「日本のサービスは信頼できる」という評価は世界的に根強くあります。「Made in Japan」や「Japanese brand」という一言は、外国人客にとって安心感に直結します。
この3つを頭に入れておくと、接客中に何を伝えるべきかが自然と見えてきます。価格を強調すべきなのか、体験を演出すべきなのか——お客様の反応を見ながら使い分けましょう。
価格差の見せ方——「目で見るお得感」が最大の購買動機
外国人接客で最も効果的なのが、「現地価格 vs 日本価格」をスマホで並べて見せることです。
どれだけ口で「日本の方が安いですよ」と伝えても、実感は薄い。でも画面上に数字を並べて見せた瞬間、お客様の目の色が変わります。「これだけ違うのか」と体感できるからです。
💡 価格差を見せる具体的な手順
- 商品を一つに絞る——複数候補があっても、まず一点に集中する
- スマホで現地の公式サイト価格を調べる——お客様の目の前で「少し調べますね」と見せながら操作する
- 日本価格と並べて画面で提示する——「台湾では〇〇円、日本では〇〇円です」と数字で見せる
- 百貨店のインバウンド割引があれば加える——「さらにこちらの割引が適用されます」と上乗せで説明する
「これだけお得」を数字で見せることが、外国人接客における最大の決め手です。言葉が通じなくても、数字は万国共通です。
✅ 価格差を見せる時の決め台詞
- 「In your country, this is [現地価格]. In Japan, [日本価格].」(スマホを指しながら)
- 「Much cheaper here in Japan.」(差額を指で示しながら)
- 「Today only, we have a special discount.」(百貨店割引がある場合)
お客様が価格差に気づいた瞬間は、接客の中で最もテンションが上がる場面のひとつです。「買いたい」から「今すぐ買う」に変わる瞬間を、この一手で作り出せます。
英語が苦手でも使える4つのフレーズ
「英語を一言も覚えていない」という方でも、この4つだけ頭に入れておけば外国人接客の場で必ず役立ちます。難しい文法は不要です。一言で伝わる、現場で実際に使われているフレーズを厳選しました。
🗣️ 外国人接客で使える4つのフレーズ
① “I can give you a discount.”
「割引できます」。インバウンド割引・免税対応がある時に使う。これだけで表情が一気に明るくなります。
② “Suits you.”
「お似合いです」。試着や商品を手に取った後に一言。シンプルだからこそ、自然に伝わります。
③ “かわいい”
これは日本語のまま万国共通で通じます。アジア圏はもちろん、欧米のお客様にも「KAWAII」は浸透しています。日本語で言うことで、むしろ喜ばれます。
④ “Most popular.”
「一番人気です」。商品を提示する時に添えるだけで、社会的証明として機能します。選択に迷っているお客様の背中を自然に押せます。
この4つは発音が完璧でなくても大丈夫です。笑顔と一緒に伝えれば、必ず意図は届きます。まずは今日から一つだけでも使ってみてください。
外国人接客で最後に大切なこと
ここまでいくつかの技術をお伝えしてきましたが、最終的に外国人接客で最も大切なのは「伝えようとする姿勢」です。
翻訳アプリを使うことも、価格差を見せることも、その国の一言を言うことも——すべては「あなたのことをおもてなししたい」という気持ちの表現です。
言葉が通じなくても、その姿勢はお客様に必ず伝わります。日本の接客が世界中から評価されているのは、技術よりもその「誠実さ」にあります。英語が話せなくても、誠実な接客はできます。
外国人客が「また来たい」と思う店は、流暢な英語が聞けた店ではありません。「親切にしてもらえた」「楽しいショッピングができた」と感じた店です。笑顔・誠実さ・使えるものを全て使う工夫——それが外国人接客の本質です。
まとめ
- ✅ まず日本語でアプローチ → 外国人と分かったら「Where are you from?」→ その国の一言でアイスブレイク
- ✅ 翻訳アプリを即座に出す → 店内スタッフ → 通訳サービスの順で「使えるものを全て使う」
- ✅ 外国人が日本で買う理由は「価格・思い出・安心感」の3つ——何を強調するか見極める
- ✅ 現地価格 vs 日本価格をスマホで並べて見せる——数字は万国共通、最大の購買動機になる
- ✅ 覚えておくフレーズは4つだけ——”I can give you a discount.” “Suits you.” “かわいい” “Most popular.”
📋 明日からできること
✅ 「Where are you from?」とその国の一言を覚える:韓国ならアンニョンハセヨ、中国・台湾ならニーハオ、フランスならボンジュール——明日の出勤前にこのページをスクリーンショットしてスタンバイしておく
✅ 翻訳アプリをスマホのホーム画面に置く:Google翻訳かDeepLをすぐ出せる状態にしておく。外国人客が来た瞬間に「翻訳アプリ使っていいですか?」と出す練習を1回やっておく
✅ 今日担当する商品の現地価格を1品だけ調べておく:自分が売りたい商品について「これ、海外だといくらか」を把握しておくだけで、価格差を見せる準備が整う
📖 次回予告
【第18話】現役ラグジュアリーブランドマネージャーが教える|クレームをリピートに変える対応術
クレームは「失客」ではなく「最大のファン化チャンス」。その対応術を次回お伝えします。


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