📖 売れる接客の教科書シリーズ
第1章(基礎〜販売):第1〜10話はこちら
▶ 第2章:個人売上 実践強化編
「高額商品、なかなか売れなくて…」
先輩はさらっと売るのに、自分が出すと反応が薄い。値段を見せるタイミングが怖い。そもそも誰に出せばいいかわからない——2年目前後の販売員がつまずきやすいのが、高額商品の扱いです。
結論から言います。高額商品は、普通の商品と同じアプローチをしていては売れません。むしろ、通常商品と真逆の戦略が必要です。
私は現在も外資系ラグジュアリーブランドでプレーイングマネージャーとして働いています。クロコダイルの財布からコレクションラインのバッグまで、高額商品を売り続けてきた中で、売れる販売員には明確な共通点がありました。
その共通点は「見せる相手を選び、出し方に戦略を持っていること」です。
高額商品が売れるかどうかは「出し方」で9割決まる。
誰に・どう見せるか——この設計が通常商品との最大の違い。
最初のステップ:見せる相手を選ぶ
高額商品の提案で最初にやるべきことは、「この方に出すか出さないか」の判断です。全員に見せようとすると、空振りが増えてかえって信頼を失います。
判断材料は3つです。
① 持ち物・服装
今身につけているバッグ・時計・靴・コーデ全体のトーン。すでに高額ブランドを持っていれば、高額商品への感度が高い可能性がある。
② 年代・言動
話し方・立ち居振る舞い・商品への触れ方。「上質なものを知っている」雰囲気があるかどうかを感じ取る。
③ 会話の中でわかる価値観
「長く使えるものが好き」「いいものを少数持ちたい」という言葉が出たら、高額商品への感度が高いサイン。
これらはあくまで仮説です。確信がなくても、「もしかしたら刺さるかもしれない」と感じたら次のステップに進みます。迷ったら出してみる——ただし出し方に工夫を忘れずに。
3点提示に「サプライズ」で混ぜる
高額商品を提案する最初の一手は、さりげなく混ぜることです。
「こちら稀少な素材を使った特別な商品なんですが…」と前置きたっぷりに出すのではなく、お客様が探している条件に近い通常商品2点に、高額商品を1点だけそっと混ぜて3点提示します。
✅ サプライズ混ぜる時の出し方
「こちらの2点はご予算に合うものです。それとこちら——普通の5倍くらいのお値段になるんですが、もしよければ触ってみてください」
→ 価格を先に伝えることで、後から驚かせない。「触ってみてください」と体験を促す。
価格を先に伝えるのがポイントです。後から値段を見せると「こんなに高いの!?」という反応になりますが、先に伝えておけばお客様は覚悟を持って触れます。
カテゴリ別——「サプライズ商品」の例
財布・小物
クロコダイル・オーストリッチなどエキゾチックレザー。通常レザーとは触り心地・光沢・存在感がまったく違う。手に取った瞬間に違いがわかる。
バッグ
コレクションモデル・限定品・特別受注品。通常ラインにはないデザイン・素材・カラーが特徴。「この季節しか出ない」「このシーズンのみ」という稀少性がある。
「触るかどうか」が興味のバロメーター
3点を提示した後は、お客様の反応を観察します。ここで最も重要なシグナルが「触るかどうか」です。
✅ 触る → 興味あり
手が伸びた瞬間から本格的な説明に入ります。素材の希少性・製法・ストーリーを丁寧に伝えていく。
→ 触らない・説明を聞いていない → 興味なし
無理に押さず、自然に通常商品へ戻ります。「こちらの2点はご予算に合いますので…」とスムーズに切り替える。空振りを引きずらないことが大事。
説明を聞いてくれているかどうかも重要な判断材料です。目線がその商品に向いているか、質問が出てくるか——体の反応は正直です。
通常商品と真逆:高額商品は「一点提示」
第4話の「3点の法則」では「3点提示で選ばせる」と解説しました。しかし高額商品は、興味を持ってもらった後は真逆の戦略に切り替えます。
通常商品 vs 高額商品の戦略の違い
通常商品
3点提示→質問しながら絞る→二択→決定
高額商品
サプライズで混ぜる→反応を見る→一点に集中させる→決定
お客様が高額商品に興味を示したら、テーブルの上にその一点だけを残します。通常商品を静かに片づける。選択肢を消すことで、意識がその一点に集中します。
迷わせないこと——これが高額商品の鉄則です。複数点を並べたままにすると「やっぱり普通のにします」という方向に戻りやすくなります。
一点提示の後に使う「決め台詞」
テーブルに一点だけが残ったら、希少性・唯一性をしっかり言葉にして伝えます。この段階で「背中を押す一言」が効いてきます。
✅ 現場で使える決め台詞
- 「ボードゲームで言えば、これが上がりの素材です」
- 「この世に同じ柄・同じ模様のものは2点とありません——食事会でテーブルに置いたら、絶対話題になります」
- 「いつも出会えるものではありません」
- 「このブランドの中で最上位に位置するシリーズです」
- 「これを持っている人が、世界に何人いるか——それくらいの稀少さです」
どれも「数値」ではなく「唯一性・最上級・希少性」を伝える言葉です。高額商品に迷っているお客様に必要なのは、スペック説明ではなく「これは特別なものだ」という確信です。
また、第13話の情景フレーズと組み合わせることでさらに効果が高まります。
「この世に同じ柄・同じ模様のものは2点とありません——食事会でテーブルに置いたら、絶対話題になります」
→ 希少性 × 情景を組み合わせると、お客様の頭の中に「持っている未来」が浮かびやすくなる。
高額商品を提案する時の注意点
❌ やりがちなNG
- 反応を確認せず最初から「これが一番いい商品です」と押し出す
- 価格を後から見せて驚かせる
- 通常商品と同じように複数点を並べたまま説明を続ける
- ポテンシャルが低い方に無理に見せてお互いに気まずくなる
高額商品は「出す相手」「出すタイミング」「出し方」の3つが揃って初めて機能します。どれか一つが欠けても成立しにくい。逆に言えば、この3つを設計できれば、先輩との差はここで大きくつきます。
まとめ
- ✅ 高額商品は「見せる相手を選ぶ」ことがスタート——持ち物・言動・価値観で仮説を立てる
- ✅ 通常商品2点にさりげなく混ぜてサプライズ提示——価格は先に伝えて触ってもらう
- ✅ 触るかどうかで興味を判断——興味あれば一点に集中させ、なければ通常商品へ戻る
- ✅ 高額商品は「一点提示」——テーブルに一点だけ残して迷わせない
- ✅ 希少性・唯一性を言葉にして伝える——「同じ模様は世界に2点とない」
📋 明日からできること
✅ 来店客の持ち物・言動から「高額商品を出すか出さないか」を意識して観察する:全員に出そうとせず、「この方なら刺さるかもしれない」という感度を磨く。今日1人意識して見てみる
✅ 3点提示の中に稀少品を1点混ぜてみる:「普通の5倍くらいのお値段ですが、触ってみてください」と価格を先に伝えてさりげなく出す。触るかどうかだけ観察する
✅ 高額商品に興味を持ってもらえたら、テーブルをその一点だけにする:通常商品を静かに片づけて一点に集中させる。そして「この世に同じ模様は2点とない」と希少性を一言伝える
📖 次回予告
【第16話】現役ラグジュアリーブランドマネージャーが教える|客単価を上げるセット提案術
1点だけ買われて終わっていませんか?セット提案には「タイミング」と「伝え方」に法則があります。


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